事業承継と聞くと、譲渡側、つまり事業を手放す側の視点がクローズアップされることが多いかもしれません。しかし、事業承継は譲受手(買い手)の存在なしには成立しません。事業を譲り受ける側としての視点は、M&Aの成功や事業の持続可能な発展において非常に重要です。この記事では、事業の譲受手としての役割や心構えについて解説し、事業を受け継ぐことでどのような機会やリスクがあるかを考えてみましょう。

事業承継がもたらすチャンス

事業承継がもたらすチャンス

事業を譲り受けるというのは、単に会社を買収するという行為にとどまりません。既存の顧客基盤、ブランド、ノウハウ、事業インフラなど、譲受手にとっては大きな資産が一体となって受け継がれるため、ゼロから事業を立ち上げるよりも有利なスタートを切れる場合があります。特に、以下のようなチャンスが存在します。

市場の拡大:事業の譲受手は、事業承継により新たな市場や顧客層へのアクセスが可能になります。例えば、地域に根差した企業を譲り受けることで、地域特有の商圏を獲得できます。

ブランド力の活用:譲り受ける事業が確立されたブランドを持っている場合、それを活用することで信頼性が確保され、ビジネスの拡大が促進されます。

スピーディーな事業運営:既存のインフラや人材をそのまま活用できるため、新たな設備投資や人材確保にかかる時間とコストを抑えることができます。

ただし、このようなチャンスを享受するためには、慎重な計画と入念な準備が必要です。

事業譲受の際に直面するリスク

事業譲受の際に直面するリスク

一方で、事業を譲り受ける際には一定のリスクが伴います。譲受手は、事業の現状を正確に把握し、適切な対策を講じる必要があります。主なリスクは次の通りです。

経営資源の摩耗:長期間にわたる事業運営の中で、設備の老朽化や人的資源の疲弊が見られることがあります。これらを改善するには時間と費用が必要です。

企業文化の承継:特に中小企業の場合、経営者のカリスマ性や企業文化がビジネスの成功に直結していることがあります。新たな経営体制に移行する際には、社員が不安を抱いたり、モチベーションが低下するリスクが存在します。

財務的なリスク:事業譲受に際しては、財務状況の綿密な調査(デューディリジェンス:DD)が欠かせません。予想外の負債やキャッシュフローの問題が隠れている可能性もあるため、事前にリスクを洗い出しておくことが重要です。

成功するためのポイント

成功するためのポイント

事業承継の成功には、譲受手が積極的に関与し、継続的な成長戦略を立てることが重要です。以下のポイントを押さえて、計画を進めましょう。

明確なビジョン:譲り受けた事業をどのように発展させていくのか、明確なビジョンを持つことが重要です。短期的な利益だけでなく、長期的な持続可能性を視野に入れた経営戦略を策定しましょう。

人材のケアとモチベーション維持:経営体制が変わることで、社員は不安を感じることがあります。経営者として社員とコミュニケーションを図り、モチベーションを高める取り組みを行うことが、事業の円滑な引継ぎに繋がります。

財務面での余裕の確保:事業を譲り受ける際は、買収資金に加え、設備の新規取得・更新投資などの追加資金が必要になる場合があります。予想外の支出に備え、財務面での余裕を持つことが不可欠です。

まとめ

事業を譲り受けることは、譲受手にとっても挑戦であり、同時に大きなチャンスです。これまでの経営資源を活かしつつ、あなたのビジョンを組み合わせることで、新たな価値を創造できるかもしれません。しっかりとした計画を立て、リスクとチャンスを見極めて事業承継を成功させましょう。近い将来、あなた自身が当事者になる可能性もあるのですから。