現在、日本の多くの中小企業が事業承継問題に直面しています。後継者不足や事業承継計画の先送りが、企業の存続に大きな影響を与えているのです。

本動画では、中小企業の事業承継が抱える問題点と、円滑に事業承継を進めるために必要な取組みについて説明します。

多くの中小企業が事業承継のタイミングに

多くの中小企業が事業承継のタイミングに

2021年6月時点で、日本国内の企業のうち中小企業が占める割合は99.7%にのぼります。

中小企業は雇用の創出や地域経済の活性化といった面だけでなく、独自の技術開発や地域への社会貢献といった面でも重要な役割を果たしており、日本全体の長期的な安定成長には欠かせない存在です。

しかし、たとえ業績に問題がなく、十分な経営資源を有している中小企業であっても、後継者がいないために事業を継続できず、廃業を選択せざるを得ないケースも少なくありません。そうした地域経済の原動力である中小企業が持続的に継続・発展していくためには、事業承継に向けた取組みをスムーズに進めることが急務です。

実際に、後継者不在を理由に廃業を予定している中小企業は全体の約6割に上り、これまでの事業運営で培ってきた人材や資産、ノウハウなどの貴重な経営資源が失われてしまうことになるのです。

高齢化が進む日本の中小企業

高齢化が進む日本の中小企業

日本の中小企業は高齢化が進んでいます。2000年には経営者の年齢層のピークが「50歳~54歳」でしたが、2020年時点では「60歳~64歳」、「65歳~69歳」、「70歳~74歳」と高年齢層に分散しています。

中小企業の経営者の引退年齢は60歳から70歳代が中心であることから、今後5〜10年程度で多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えることが見込まれます。

経営者高齢化の要因は後継者不足

経営者高齢化の要因は後継者不足

中小企業のうち、後継者が決定していて後継者本人も承諾している企業は10.5%にとどまり、後継者が決まっていない企業は20%、廃業を予定している企業は6割近くに上っています。

ただ、後継者不足によって廃業を予定している企業であっても、事業自体は順調で将来的な事業の維持・成長が可能である企業も少なくありません。

後継者さえ確保できれば事業を継続し、より発展させていける可能性があるにも関わらず、引き継げる人材がいないために廃業を選択せざるを得ないという状況は、これまで培ってきた貴重な経営資源を失うこととなり、地域社会にとっても大きな損失となります。

事業承継には10年の準備期間が必要

事業承継には10年の準備期間が必要

事業承継には、後継者育成期間を含めて5年から10年程度が必要です。しかし、日々の業務に追われ、事業承継のための準備を先送りしてしまう企業が多いというのが実情といえるでしょう。

事業承継に向けた準備を先送りしてしまう背景には、目の前の業務に精一杯で準備に手が回らないことに加え、「何から始めればよいのか」、「誰に相談したらよいか」がわからないなどといった、事業承継に関する知識不足、認識不足があります。

事業自体は健全に維持・成長しているにも関わらず、こういった知識不足・認識不足から後継者確保が後手にまわり、廃業を余儀なくされるケースもあります。経営者の平均引退年齢が70歳前後であることを踏まえると、60歳ごろには事業承継の準備をスタートするのが望ましいでしょう。

事業承継を円滑に進めるためには、後継者の育成だけでなく、資産の整理や従業員・取引先等との信頼関係構築など、じっくりと時間をかけて取り組むことが重要です。早めに対策を行い、スムーズな事業承継を実現させましょう。