事業承継の必要性を認識し、自社の経営状況や課題を明確にした上で、強みを磨き上げたら、いよいよ具体的な事業承継計画の策定に取り組む段階です。

この動画では、事業承継計画の概要と策定時のポイントについて説明します。

事業承継計画とは

事業承継計画とは

事業承継計画とは、経営者の引退後を見据えて、中長期的な経営方針や目標、課題などを具体的かつ詳細に盛り込んだ行動計画のことです。単に事業を後継者へ引き渡すだけでなく、持続的な事業の発展を見据えた計画であり、後継者の選定・育成や経営権の移譲、自社株式の承継などが含まれます。

なお、事業承継計画は現経営者が単独で策定するのではなく、事業承継後に実際に事業運営を担うこととなる後継者とともに策定するのが望ましいでしょう。後継者と二人三脚で計画を練ることで、経営者交代後も切れ目ないスムーズな事業運営が期待できます。

事業承継計画の作成目的

事業承継計画の作成目的

事業承継計画は円滑な事業承継を実現するための重要なツールです。計画作成を通じて現経営者と後継者が対話を重ねることで、事業の現状や将来像を共有し、認識をすり合わせる役割を果たします。承継後の経営方針が明確化し、従業員や取引先などの外部関係者の理解と支持も得やすくなるでしょう。

また、親族や従業員間のトラブルを未然に防ぐ効果も期待できます。事前に関係者から意見を募り、合意内容を計画に反映させることで、後継者選定や事業運営に関する摩擦を回避できます。

さらに、取引先や金融機関との信頼関係を維持することも、事業承継計画作成の重要な目的の一つです。経営者交代に伴い信頼関係が崩れるリスクを抑えるため、事前に計画を共有しておくのが望ましいといえます。

最後に、事業承継計画の作成は、事業承継税制の特例を利用するための要件でもあります。この税制の利用を検討している場合は、必要条件を確認しつつ計画を作成することが推奨されます。

事業承継計画作成の手順

事業承継計画作成の手順

事業承継計画には特に定められた形式などはありませんが、事業承継のビジョンや方向性を明示して全体像を整理する「事業承継計画書」と、具体的な行動計画を盛り込んだ「事業承継計画表」の二つを作成することで、より効率的に事業承継を進められます。

計画作成の流れとして、まず、自社の現状を把握し、経営者保有の株式や資産、後継者候補をリストアップした後、候補者や関係者の意思を確認し、親族内承継や第三者承継など最適な承継方法を検討します。その後、経営理念や目標を明記した「計画書」と、詳細なアクションプランや実施スケジュールを盛り込んだ「計画表」を作成します。

事業承継計画の内容

事業承継計画の内容

事業承継計画の策定にあたっては、以下のポイントに沿って具体的な行動を設定します。

会社の中長期目標

経営の現状を把握し課題を明確にした上で、中長期的な経営方針やビジョンを定めます。そして、経営方針やビジョンに沿った具体的な数値目標(売上高、経常利益など)を設定し、事業承継計画に反映させていきます。

経営者の行動計画

経営者は後継者の選定と育成を計画的に進めます。経営権の分散リスクへの対策として、後継者に経営権が集中するよう自社株式の生前贈与を進めたり、税務リスクを最小限にするために税制の特例制度の活用を検討したりといった対策を行いましょう。後継者との綿密なコミュニケーションを通じて、経営者としての振る舞いや取引先・従業員との信頼関係の築き方などを学ばせることも、後継者育成のために不可欠な行動です。

後継者の行動計画

後継者は次期経営者としての覚悟を持ち、必要な知識と実務能力を身に付けていく必要があります。自社の事業内容についての理解を深め、経営に必要となる実務面のスキルを高めるためにも、実際に現場で業務を経験する、社外で実務経験を積む、外部の研修に参加するなど、事業承継に向けて意欲的に行動することが大切です。

また、中小企業が事業承継を円滑に行うための特別な支援制度を定めた「経営承継円滑化法」による、相続税・贈与税の納税猶予や遺留分減殺請求リスクの軽減といった支援制度の活用も検討しましょう。

会社の行動計画

会社の行動計画は、経営権の分散防止対策が中心となります。定款の変更や無議決権株式の発行などを行い、経営権が後継者に集中するよう調整します。また、経営者交代のタイミングで退職金を支給する必要が生じる場合もあるため、原資確保に向けて生命保険契約などの資金プランも検討を進める必要があります。