事業承継を成功させるためには、適切な後継者の選定と育成が欠かせません。しかし、近年では「後継者がいない」「育成ができない」といった理由から、中小企業経営者の約5割が自分の代で廃業を予定しているのが実情です。

この動画では、後継者選定のポイントと育成方法について説明します。

親族外承継の増加

親族外承継の増加

かつては、経営者の子や親族を後継者とする「親族内承継」が一般的でした。しかし、子どもの職業選択の自由を尊重する風潮や少子化、事業の将来性に対する不安などが影響し、親族内で後継者を選ぶことが難しくなっています。

その結果、親族内承継は減少し、役員や従業員を後継者とする親族外承継や、社外の第三者に事業を譲渡するM&Aが増加しています。

後継者の選定ポイント

後継者の選定ポイント

後継者を選定するにあたっては、次期経営者としての資質や覚悟を備えた人物を選ぶことが重要です。親族にこだわらず、幅広い候補者の中から信頼できる適切な人材を選定することが求められます。

後継者を選定する際のポイントは以下の3点です。

経営ビジョンの共有と覚悟

会社の経営ビジョンを理解し、会社をどのように発展させていくのかを考えられる人物であることが求められます。経営者としての使命感を持ち、会社を引っ張っていく覚悟や強い意志があるかが重要です。

経営に関する知識と実務能力

経営全般に関する知識やスキルを習得している必要があります。営業、財務、管理部門など幅広い経験を積み、経営判断力を身につけていることが求められます。

リーダーシップ

取引先や従業員からの信頼を得ていることも大切です。単に実務に精通しているだけでなく、チームをまとめ、目標に向かって道を切り開いていく覚悟と意欲を持ち合わせているかも重視します。

後継者選定に伴う注意点 

後継者選定に伴う注意点 

後継者候補が複数いる場合は、判定基準を明確に示すことがトラブル防止に役立ちます。上記の3つの視点に加えて、コミュニケーション能力や高い倫理観を有しているかなども判断基準にするとよいでしょう。

また、親族の意向を確認したり、後継者候補に対する社内外からの評価をヒアリングしたりすることで、後継者選定に関する情報を幅広く周囲と共有し、関係者に安心感を与えることが重要です。

さらに、トラブルの防止や後継者育成の時間確保のためにも、経営者に発言権や決定権があるうちに後継者を決定しておくことが望ましいと言えます。

後継者育成の方法

後継者育成の方法

後継者の育成には、一般的に5~10年の期間が必要とされています。具体的な育成方法としては以下のようなものがあります。

社内での実務経験

現場の仕事を経験させ、会社の業務を深く理解させます。営業や管理部門、財務部門等での経験を積むことで、経営全体を俯瞰する視点が養われるでしょう。

また、責任ある役職を任せ、意思決定やリーダーシップを発揮する機会を与えることで実践的なスキルを培います。経営者が直接指導し、ノウハウや経営理念を引き継ぐことも大切です。

社外での実務経験

他社での経験は視野を広げるために大変有効です。他社の経営手法を学び、自社に新しいアイデアを取り入れることができるほか、人脈の形成にもつながります。

外部研修の活用

経営戦略や組織管理に関する外部研修への参加も推奨されます。経営セミナーなどで専門的かつ最新の経営手法や戦略に触れ、後継者の視野を広げることで、次期経営者としての自信を育てることができます。