事業承継の課題の一つに税負担があります。後継者に自社株式や事業用資産を引き継ぐ際に発生する贈与税や相続税は、計画的に対策を行うことが重要です。

納税猶予や免除の制度など、活用できる特例をしっかりと把握し、贈与税や相続税に備えましょう。

贈与税・相続税の概要

贈与税・相続税の概要

贈与税は、生前に財産を受け取った際に課され、年間110万円の基礎控除が受けられる「暦年課税制度」をはじめ、60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子や孫へ財産を贈与する場合に選択できる「相続時精算課税制度」などの課税方式があります。「相続時清算課税制度」では、特別控除額2,500万円の範囲内であれば贈与税が課されません。また、2024年1月からは「相続時清算課税制度」に年間110万円の基礎控除が新設されたため、特別控除額2500万円とは別に、毎年110万円までの贈与が非課税となります。

一方、相続税は、被相続人が亡くなった際にその財産を取得した場合に課され、課税遺産総額が「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」を超える場合に適用されます。

事業承継税制の活用

事業承継税制の活用

事業承継税制は、非上場株式などの相続や贈与に対する税負担を大幅に軽減するための制度です。後継者が事業を継続することを条件に、相続税の80%、贈与税の全額が納税猶予されます。さらに、贈与・相続の時点から後継者が5年間事業を継続し、その間に雇用の8割以上を維持するなど一定の要件を満たすことで、猶予された税金が免除される場合もあります。

事業承継税制を活用することで、後継者は大きな税負担を負うことなく円滑に事業を継続できるほか、親族外の承継にも適用でき、幅広い事業承継のニーズに対応することが可能です。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例は、事業用または居住用の土地を相続する際に、一定の要件を満たすことで相続税の課税価格を大幅に減額できる制度です。具体的には、事業用宅地は最大80%、居住用宅地も最大80%減額されます。

後継者は申告期限まで事業を継続する必要がありますが、この特例により、土地を引き継ぐ際の税負担が軽減され、安定的な事業継続が実現できます。

死亡退職金・死亡保険金の相続税非課税枠

死亡退職金・死亡保険金の相続税非課税枠

経営者の死亡から3年以内に支給が確定した死亡退職金は、相続財産として相続税の課税対象となりますが、「500万円×法定相続人の数」で計算される非課税枠が設けられており、退職金の合計額がこの非課税限度額以内であれば、相続税は課税されません。

同様に、死亡保険金にも「500万円 × 法定相続人の数」で計算される非課税枠があります。被相続人が生命保険や損害保険の保険料を負担し、受取人が経営者の死亡により保険金を受け取った場合でも、非課税枠限度額以内であれば相続税は課税されません。

死亡退職金や死亡保険金の非課税枠を活用することで、相続税の課税対象となる財産を減らし、相続税の負担を軽減できる点が大きなメリットと言えます。