事業承継において、企業が抱える債務をどのように整理するかは、後継者の負担軽減に直結する重要な要素です。
この動画では、事業承継時の債務整理と個人保証への対応について説明します。
事業承継に伴う債務整理

多くの中小企業は、長年にわたり運転資金や設備投資のために金融機関からの借入を利用しています。これらの債務が適切に管理されないまま事業承継が行われると、後継者は重い借入負担を抱えることになり、企業経営の健全性が損なわれるリスクがあります。
まず、債務整理を行う際には、借入金の内容や返済計画を精査し、不要な債務の削減や返済条件の再交渉を検討します。さらに、財務健全化を図るため、資産の売却やコスト削減などを実施することも有効な手段です。経営改善計画を立てることで、金融機関からの理解と協力を得ることができ、後継者の負担を軽減することが可能です。
経営者個人の債権・債務への対応

事業承継では、現経営者の個人債務の承継に注意が必要です。経営者が会社に事業用資金を貸し付けている場合は、債権・債務関係を整理しながら事業承継の準備を進めていかなくてはなりません。また、経営者の相続が発生した際には、個人債務をどのように相続人間で分配するかが課題となるでしょう。
さらに、自己所有の不動産を事業の担保にしている場合、相続人が複数いるとそれぞれに相続されることとなり、経営が不安定になる可能性があるため、債務の圧縮と金融機関との信頼構築が重要となります。
経営者保証に関するガイドライン

経営者保証とは、中小企業が融資を受ける際に、経営者個人が会社の連帯保証人になることを指しますが、経営者保証は事業承継において大きな障害となり得ます。
具体的には、経営者が交代する際に後継者が個人保証を引き継ぐことが求められるケースです。この場合、後継者の個人資産が事業債務の担保にされ、事業がうまくいかなかった場合には後継者の生活にも影響を及ぼす可能性があります。
こうした問題を解決するため、日本商工会議所と一般社団法人全国銀行協会が設置した「経営者保証に関するガイドライン研究会」によって、2013年に「経営者保証ガイドライン」が策定されました。
本ガイドラインでは、法人と経営者の資産を明確に分離し、定期的に財務情報を開示すること、安定した収益基盤を構築すること、など一定の条件を満たすことで、金融機関が経営者保証の解除に応じることが示されています。本ガイドラインにより、事業承継時に後継者が負うこととなる個人保証のリスクを軽減し、より円滑に承継を進めることが期待されます。