事業を譲り受ける際に避けて通れない課題が、対価の支払いです。多くの場合、譲受けの対価は相当な金額に上るため、その資金をどのように調達するかは譲受手の経営戦略に直結します。資金調達の方法を検討する際には、コスト、リスク、そして事業の将来性を考慮する必要があります。この記事では、資金調達の主な手段と、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。

自己資金

自己資金

まず、自己資金を活用して対価を支払う方法があります。譲受手が十分な現金を保有している場合、その資金で支払うというシンプルな方法です。

自己資金のメリット

利息負担がない:自己資金を使用することで、借入金の利息負担が発生しません。これは、財務的な負担を軽減することに繋がります。

財務リスクの回避:借入金を利用しないため、負債が増加せず、財務健全性を保つことができます。

迅速な取引が可能:自己資金での支払いは、資金調達に時間を要さないため、迅速な譲受けが可能です。

自己資金のデメリット

資金余力の低下:自己資金を大量に使用すると、運転資金や他の投資に使える資金が減少し、経営に支障を来す恐れがあります。

機会損失の発生:自己資金を事業譲受に集中させることで、他の成長機会を逃す可能性があります。

銀行借入

銀行借入

銀行借入は、譲受手が最も一般的に利用する資金調達方法です。金融機関から融資を受けることで、必要な対価を調達します。銀行借入においては、譲受手の事業計画や信用力に応じて、融資条件が決まります。

銀行借入のメリット

一定規模の資金調達:銀行借入は一定規模の資金調達手段として有効であり、多額の譲受対価が必要な場合に適しています。

返済期間の調整:借入期間を長期化することができれば、毎月の返済負担を低減することができます。

金利が比較的低い:他の資金調達方法と比べて、銀行借入は相対的に金利が低い調達手段と言えます。

銀行借入のデメリット

利息の発生:借入金には利息がつくため、長期的なコストが発生します。事業収益が計画通りにいかない場合、利息支払が負担となるリスクがあります。

厳しい審査:銀行は融資審査を厳格に行うため、譲受手の財務状況が悪い場合や将来の事業計画が不十分な場合には、融資を受けることが難しくなります。

担保が必要:多くの場合、融資を受けるためには担保が求められます。担保を提供できない場合、融資条件が悪化したり、そもそも銀行借入を調達できなくなるリスクがあります。

投資家からの資金調達

投資家からの資金調達

外部の投資家から資本性資金を調達する方法もあります。ファンドやベンチャーキャピタルからの出資などがその一例です。

投資家からの資金調達のメリット

返済義務がない:普通株式を発行することで資金を調達する場合、返済義務がありません。このため、事業が軌道に乗るまで資金を温存することができます。

事業ノウハウの提供:投資家は単に資金を提供するだけでなく、事業運営に関するノウハウやネットワークも提供してくれる場合があります。それらの知見を活用することで、自社や対象会社の事業価値を向上させる余地があります。

財務リスクの分散:投資家からの資本性資金の調達は、借入金とは異なるため、純資産として計上されます。このため、自社の財務体質を悪化させることなく、資金調達を行うことができます。

投資家からの資金調達のデメリット

株式の希薄化:投資家からの資金調達に際して普通株式を発行する場合、経営権が分散し、譲受手が全ての経営判断を行えなくなる可能性があります。

利益の配分:事業が成功した場合、投資家にも利益を配分する必要があります。これにより、譲受手が得られる利益が減少することがあります。

売主との交渉による支払条件の調整

売主との交渉による支払条件の調整

資金調達に関して、売主と交渉することで支払条件を調整する方法もあります。売主との交渉で柔軟な支払方法を設定することで、資金負担を軽減することが可能です。

分割払い:譲受手が一度に多額の資金を支払うことが難しい場合、対価を分割払いにすることで、資金繰りを調整することができます。

アーンアウト条項:事業の将来収益に基づいて支払いを行う「アーンアウト条項」を設定することで、譲受後の収益に応じて支払う金額を調整できます。これにより、譲受手はリスクを軽減でき、譲渡側も事業の成長にインセンティブを持つことができます。

まとめ

譲受けの対価を支払う際には、複数の資金調達方法を検討し、それぞれのメリットとデメリットを慎重に分析することが重要です。自己資金、銀行借入、投資家からの資金調達、売主との交渉で支払条件を調整するなど、選択肢は複数挙げられます。最適な資金調達方法を選ぶことで、事業の安定した成長を実現し、譲受けの成功を確実なものにすることができます。